3.コレステロールのパワーを理解しましょう

(1)コレステロールは、健康障害を引き起こす悪者のように思われていますが、人間のからだの@60兆個の細胞の細胞膜をつくる主成分であり、A脳の神経組織の成分であり、B体内のさまざまなホルモンの原料となり、C脂肪などの消化吸収を助ける胆汁酸の材料となり、DビタミンA・E・Kなどの吸収を助ける働きをするなど、コレステロールは人間の生命維持に欠かせないものです。

(2)コレステロールは大別すると血管を通じて体の各組織にコレステロールを運ぶ[LDLコレステロール]と余分なコレステロールを肝臓に回収する「HDLコレステロール」に分けられます。 「LDLコレステロール」は悪玉コレステロールと言われますが、これは、血中の「LDLコレステロール」値が一定量(140mg/dl)を超えると、動脈硬化などの病気を引き起こす原因となるために悪玉コレステロールと言われるようになったものですが、「LDLコレステロール」はもともと人間が生きていく上で必要不可欠なものなのです。一方、コレステロール値が低くなると、血管が破れやすくなったり、免疫力が低下したり、ガンの発症リスクが高くなったり、精神的に不安定となったり、暴力行為を起こしたり、鬱状態になりやすいなど、最近ではコレステロール値が低いことのほうが危険視されています。

(3)なぜ、「LDLコレステロール」が悪玉コレステロールと言われるようになったのか?「血管に炎症」が起こると、LDLコレステロールが駆けつけて炎症を修復します。この炎症が継続的に起こると、修復が繰り返されてその部分がかさぶたのように盛り上がってきて「プラーク」という塊になります。このプラークが大きくなると心筋梗塞や脳梗塞の危険が高まり、また、プラークが破裂したりすると血液が凝固して、細い血管が詰まったりして傷害を起こすことから「LDLコレステロール」は「無実の罪」(悪玉の汚名)を着せられてきたのです。 心筋梗塞等の本当の原因は、「血管の炎症」によるものであり、これは喫煙や高血糖、糖尿病、遺伝的体質、極度の肥満、ストレス等により引き起こされるもので、「LDLコレステロール」が原因ではないのです。

(4)たまごの栄養成分表を見るとコレステロール値が多いことが分かります。このことが、消費者の誤解を招いています。人間のコレステロールの80%は肝臓で作られたもので、残りの20%が食物から摂取して作られたものです。人間の体は、血液中のコレステロールを一定に保つように調整していますので、食物のコレステロール値が高いから血中のコレステロール値が高くなるものではありません。たまごの摂取量とコレステロール値の調査でも、たまごを食べなかった人と日に2個食べた人のLDLコレステロール値に差は見られませんでした。最近、欧米では、「たまごは1日に何個食べてもだいじょうぶ」といわれるようになってきました。

(5)鶏卵には、コレステロールの動脈壁への沈着を抑える不飽和脂肪酸(リノール酸)が、多量に含まれていうことから、あまり心配する必要はありません。また、たまごの卵白にはアミノ酸シスチンというコレステロール値を下げる効果があることが明らかになりました。更に、卵黄に多く含まれるレシチンという脂肪酸は、動脈硬化の予防薬の主成分に使われているもので、血中のコレステロールを減らし、血管壁のコレステロールを溶かす働きがあることも分かりました。たまごをたくさん消費すると、血中のコレステロールが増加すると言うのは、人間の誤解から生まれたものなのです。

(6)また、最近の医学の研究結果では「コレステロール値は高い方が元気で長生き」という科学的な研究がたくさん発表されています。米国の内科医師会では2007年に「コレステロール値を測定する必要のあるのは、若い人(男性35歳未満、女性45歳未満)で家族性高脂血症の疑いのある人として、検査そのものを制限しました。」。また、2010年に米国心臓病学会でも「心血管系疾患の症状のない人たちの血圧とコレステロール検査は5年に1回でよい。」としました。